経験者は語る。～こうしてスリに遭いました～

それは２ヶ月前のことだった・・・。


「あと１０分もすればナイロビに到着するなぁ。」

そう思ってマタツに乗車していると、なにやら急いでいる様子の大柄の男が３人も乗り込んできた。

私は最後尾の座席の窓際に追いやられ、そのうちの２人と私を含めた４人で、

３人掛けの座席にギュウギュウ詰めに座ることになった。

右腕に刺青のある男が私の横に座る。

彼は大柄な上にやたらでかいリュックと大きな紙袋を持っているため、

あまりの狭さにひざを揃えて座ることも出来ない。

私はエスパー伊東並に体をコンパクトにまとめて、隣りに彼を迎え入れた。

私の胸の前にあるスペースは自然に彼のものに。

「Ｈａｋｕｎａ　ＳＨＩＤＡ！」（問題ないさ！）

覚えたてのスワヒリ語を使う私に、ケニア人の彼も笑っている。

その男はすでに汗ばんでいて「窓を開けてくれ」というので身動きが容易に取れない中、

必死になってサビついた固い窓を開けてあげた。

「Ｈａｋｕｎａ　ＭＡＴＡＴＡ！」（全く問題ないさ！）

そう言った私に、彼はまた笑っていた。

私が初めてケニア人に殿下の宝刀「Hakuna MATATA」を発した瞬間である。

先程の「Hakuna SHIDA」の方はケニアの国民性を表す言葉とあって、わりと日常で使うことが多い。

しばらくすると、今度は前に座った男が「警察がいる！シートベルトを締めろ！」と

親切に教えてくれたので、身体をぐるりとひねってシートベルトを必死になって探し続けた。

探しても探してもシートベルトはみつからなかった。

２ヶ月前のムエアチャリティマラソン。からの帰り、

こうして私はスリに遭いました・・・。

振り返ってみると、犯人が笑っていたのも無理はない。


超間抜けな外国人の私。

気がついたら男の手元には、私のクレジットカード入りのキーケース！？

「あれ？なんでそこに？」びっくりして、グイっと力づくで取り返した。

その瞬間にスリ集団３人組は、「撤収！」といわんばかりにマタツから飛び降りていった。

周りのケニア人から「よくぞ取り返した姉ちゃん！」と賞賛され、勝ち誇っていたのも束の間。

マラソンで仲良くなった大学生に、「ＭＩＨＡＲＵ、財布や携帯やカメラはある？」と確認され、


お腹の上に置いてあるバッグの中を見ると、

財布はあるけど・・・、

携帯とカメラが無い？

え～っ、無い！！

無いやん！！

やられた！！

時すでにおそし。

実は、男が隣りにいるとき２度ほど開きかけたカバンのチャックを注意深く？閉じ直していた。

今から思えば、犯人が盗んだ後に閉めようとしていたチャックを、さらに私が閉じていたのだろう。

イベント帰りのためケニア代表のサッカーユニフォームに身を包み、

「Ｈａｋｕｎａ　ＭＡＴＡＴＡ」と発する私。

無念。

スリって接触すら気付かれないように盗っていくと思い込んでいた。

悔しいというより、ただ情けなかった。

同僚やケニアに長く住んでいる日本人に話すと、みんな口を揃えて

「怪我がなくってよかった。命があってよかった。」

と、気遣い励ましてくれてた。

その通りだと思う。

それと同時に、治安の悪いケニアを再確認できた。

被害金額は任意で加入していた「ＪＯＣＡプロテクション」の盗難保険でしっかり戻り、そのお金で購入した最新のカメラも先輩隊員のご両親に運んでいただくことができ先週ナイロビで受け取ることができた。

家族が心配するだろうと今回の件は黙っていたのだけれど、


先日母からの

「保険金が振り込まれました。」

というメールをいただき今回の報告に至ったという経緯である。

家族のみんな、いつも心配かけてすいません。

犯罪に巻き込まれないように、今後はさらに気をつけます。

皆さんの優しさが胸にしみ、今回も多くの人に支えられていると感じたスリ被害だった。

私がいうのも何ですが、慣れてきた頃が一番危険！

「Ｈａｋｕｎａ　ＭＡＴＡＴＡ」を発しているときは注意のとき。

同期の皆さんも気をつけてね。

カリブパーティで新隊員に予防啓発活動。