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2011年3月9日水曜日

数値のすごさ。

継続して調べているデフォルター患者数も、その後毎月約40人ずつ増え続けている。

以前作成したリストによって、わずか5名の患者が通院を再開したと報告を受けた。

この喜びを担当ナースと共有できたことはうれしかったが、喜んでいる場合ではない。
たった、これっぽっちの結果で満足するために私はこれをやっていない。

今までデフォルタートレーシングが本当に行われているのか?という真相を知るために色んな公共機関に足を運んできた。どこへ行っても、システムは問題なくまわっているという素晴らしい説明を受ける。
そして、いざ担当者に会うことになれば、たらい回しにされて結局明確な担当者が見つからないまま終わることの繰り返し。しかし、これらは少し考えれば容易に想像がつく。

そもそも肝心のデータ自体がセンター内に放置されたまま数年間、外部の機関に一切提供されてもいないのに、それに追随する他の機関がそれを元に活動すること自体不可能だからだ。
今まで何度も架空の団体の話を聞くような感覚で説明を聞いてきた。

決して減ることのないHIV陽性者や決して減ることのない貧困層を広告塔に援助を募り、私腹を肥やしている中間層が目に付く。想像し難いことではあるが、HIV陽性者や貧困層やスラム層が減少の一途をたどり、その後すっかりいなくなれば、ケニアに溢れかえっているVCTやHIV治療や、支援団体や、NGOや、保護施設などは全て必要なくなる。ケニアの一大ビジネスが消滅することで路頭に迷う層は相当多いはずだ。
しかし、こういったシステムのカラクリは広告塔となっている層に全く理解されることのないまま、繰り返されていく。
貧乏と金持ちの位置関係は決して逆転もせず、並びもせず、ただ同じ状況を繰り返す。
以前「俺、コンドームは使わねぇ。」といっていたスラムの若者に出会ったときもそうだったが、時々こんなことを考える。

さて、話が若干反れたが、これではいかん!ということで年始早々、表とグラフをまとめて作った。
以前、全ての患者をチェックした際に判明した1,000人以上の1年以上来院記録のない患者も含めて今まで調べたデフォルターの全データを掲載した。

出来るだけ見やすく、大きく、印象的に。
来ていない期間ごとにグループ分けした横に無表情に並んでいる信じがたいほど大きな数字。 
それをこの年明けから出来る限り役職の高い人物に見せて周り、改善策を提案し続けている。

全患者数2450名
・1年以上来院なし1108名・6ヶ月以上来院なし41名
・6ヶ月来院なし60名・5ヶ月来院なし65名・4ヶ月来院なし92名
2010年5~11月デフォルター258名・2010年11月~2011年1月新デフォルター125名

言葉は必要ない。
数値が示す絶対的な説得力。
現実をこれでもかと突きつける。

そして、立場が上になればなるほど、この数字への衝撃と喰い付きはよくなる。
彼らの多くは、現場で起こっていることを知らない。

毎月約40人もの新しいデフォルターが生まれている。
しかし、この病院のセンターにはそれを見つけるシステムがない。
私はこれに危機感を覚えている。
私はこれらの問題を解決できるソフトウェアがどこにあるか知っている。
そこへレコードオフィス(データ処理)のスペシャリストを同行させて欲しい。


そして、ようやく、大きな山が動いた。

昨日話しに行った病院長の一声で、本日私はレコードオフィスの技術者タビサと共にナイバシャ内にある他の病院に向かったのだ。そこは以前、私が勝手にライバルと位置づけた私立病院である。(過去ブログ「ライバル。」

初めて見るシステムに、私以上に興味を持ってくれたタビサ。
私立病院のスタッフも、相変わらず自分達の病院に誇りを持って働いている様子で、出し惜しみする様子もなく丁寧にソフトウェアの使い方を説明してくれた。

説明を真剣に聞くタビサ(左)と親切な私立病院の職員ケン(右)

USAのHIV支援団体が作成したこのシステムを導入するには少しお金がかかるらしい。

「導入は難しいだろうか?」そう聞く私に、
タビサが「お金は何とかしてもらいましょう。だってこんな素晴らしいシステムはないわ。」と力強く答えてくれた。

実現するかどうかわからない。
また、実現してもそれがいつになるのか分からない。

毎日裏切られることの多い活動だけど、これってどうしようもないじゃんってことの多い活動だけど、そんな中でも、たまに同じ夢を語り合える人や、前を向いてひたむきに頑張っている人との出逢いがあるから頑張れる。

強気でも、弱気でもなく。
ありのままの自分は、いつ崩れてもおかしくないもろさがある。

自分が何のためにここにいるのか分からなくなるような不安定さを常に持ち合わせている毎日。

だからこそ、ここでは自分の夢や強い信念を持つことの大切さや強さを、日本にいるときより実感する。


タビサと過ごせた今日はとてもいい日だった。

さて、思い切り期待して、明日はもっといい日にしたい。

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