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2012年2月26日日曜日

日本語弁論大会。

昨今、約1,000名程度のケニア人が日本語を学んでいるらしい。
土曜日にその人々たちによる日本語弁論大会がケニア日本大使館で開催されるということで観覧に行ってきた。


同じ発表者でも学習期間は様々で、中には日本に留学していた人もいてその語学力も素晴らしかった。
今回2位に輝いたケニアッタ大学の女性は流れるような日本語で身ぶり手ぶりと笑いを交えて、
日本での「一番驚いた経験」を紹介してくれた。
≪日本に1年間留学して、1年半日本語の勉強をしている≫とここまでになるんだなぁ。
と感心していたが、
よく考えればそれ以上の環境となる≪ケニアで1年9カ月生活している私。≫ということに気付き、
スワヒリ語の勉強、語学研修の2カ月で終わったしな。という揺るがない事実にまた目を向けることになった。

こうして協力隊にきていると、同じ日本人でも語学力をひとつの能力として使いこなし
色んな世界に挑戦していく多くの人たちと出会う。
「海外留学経験者はみんな英語が達者だ」とあたりまえに思いがちだけど、
母国語でない言語の習得は相当な努力の上にしか成り立たないということをまた当然のことながら感じる。


そしてこの大会の面白さは、その発表者の語学力そのものよりも弁論内容にあった。
落ち着いたゾマホンのような発表者25名が
「好きな日本の言葉」「日本人に伝えたいケニアの○○」「今までで一番驚いたこと」
の3つのテーマに分かれてそれぞれの想いを日本語で披露する。

”9時の講義に学生は9時半に集まります。そして、先生も9時半にきます。”
と元気にケニアの生活を紹介する女性。
「自分を乗せた飛行機が本当に空中に浮いたこと」に驚いた人がいたり、
「8歳のクリスマス時に初めて下着の存在を知った」学生がいたり、
「好きな日本の言葉はトリニクです」という若者がいたり、
一問一答のコーナーで、「賃金はスズメノナミダ程ですが、頑張っています。」と
アドリブで返せる学生もいたりで非常に楽しませてもらった。

なかでも今回優勝に輝いた女性のスピーチはとても印象に残った。
好きな日本の言葉「ありがとう」「すいません」にまつわる多くのエピソードは素晴らしいものだった。

彼女が日本に3年間住んで、どの場面でもつねに登場した「ありがとう」「すいません」の言葉。

どの店に行っても店員さんはお辞儀をしながら「ありがとう」、時間に遅れてもないのに人を待たせると「すいません」、マッサージの勉強のために留学をしていた彼女は仕事として施術しているのに、お金をいただいてるお客さんから毎回「ありがとう」といわれたことにも驚いたと話してくれた。


ケニアではお店で「いらっしゃいませ」とも「ありがとうございました」ともいわれることはない。

でも実際にこの言葉を言われたときのうれしかった経験から、
彼女はケニアに帰った今も積極的にこの言葉を使っていると話してくれた。


スピーチ後の一問一答。

質問者「あなたがケニアで積極的に“ありがとう”“すいません”という言葉を使っていることで、
     周囲のケニア人の反応はどうですか?」

発表者「(日本人的な反応で)う~ん・・・・・、
      たぶん彼らはまったく気づいてないと思います。そして何も感じないと思いますけど。」

質問者の期待していたものをそこに居合わせた日本人も同じく期待していたが、
それとは違う「ケニア人がするであろう本当の反応」に会場は大爆笑で包まれた。

会場に居合わせた“ケニアで過ごしている日本人たち”が共有する同じ感覚の中の「あるある」という部分を
ケニア人の彼女につつかれたことがとても面白かった。

質問者「では逆に、あなたが日本に伝えたいスワヒリ語の言葉は何ですか?」

発表者「え~っと、特にないですかねぇ。う~ん・・・・、
      あ、“Pole Pole”(のんびりゆっくり) っていうのは伝えたいかもしれません。
      いつも日本人はみんな急ぎすきていると感じたので。」



言語を学ぶということはその国の文化を知るということだとよく言われる。

今回の日本語弁論大会では日本語を学ぶケニア人の彼らの中に、
日本人ならではの感覚を多く伺い知れたことが本当に面白かった。


また、ケニアのナイロビにある「日本大使館」は、そこだけが日本のような空間で、
完璧なタイムマネジメントの中に久しぶりに身を置き、
3週間後に迫った日本への帰国に向けて少し身の引きしまる思いがした。


エンターティメント部門では多くの隊員の配属先の生徒たちが
パフォーマンスを披露。
どの学校の生徒たちもとてもいい表情で
日本語の歌を堂々と発表していた。
選曲も素晴らしく、どの歌詞も胸にじーんときた。

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