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2011年5月3日火曜日

大きくなれ。

彼はもう高校生ではない。

高校を卒業した社会人である。


教室の中での教師と生徒だった1対大勢の関係ではなく、

人間同士として1対1のどんな再会が出来るかとても楽しみにしていた。


しかし、いうならば「家族旅行の子供枠」のような感覚で、元生徒がケニアに来てしまった。

関西空港から飛行機を乗り継いでナイロビに来た時点で、彼の冒険は終わったのかもしれない。

それからというもの彼の目には常にケニアではなく、私が映っている。

そう気付くのに2日もかからなかった。



今からちょうど一年前に、訓練所に入った4月を思い出した。

常に思考回路の中に「生徒」がいる日常から離れて、

自分だけのことに時間を使える贅沢さと常に自分が主体となって動ける身軽さを感じた。

そしてそれ以上に、自分との真っ向勝負を突きつけられる毎日に厳しさを感じた。


他人の成長を心から期待して喜べるのが教師かもしれない。


そういった意味では、数多くいる元生徒の中でも、

教師だった頃の自分の感覚を呼び覚ますのに十分過ぎる彼がやってきてくれた。

手がかかるヤツほどかわいい。

未熟すぎる彼に、完全に眠っていたと思われる私の教師魂は十分かき立てられた。



「さて、どんな環境を用意しようか。」


あれこれと説明してわかるようなことを習得するために彼はケニアに来たのではない。

たっぷり感じてもらわなければ。


これまで完全に観光一色だった前半戦は終了。

そんなわけで先日、彼と寝台列車に乗ってモンバサに移動した。

そこで同期隊員の活動先の孤児院にお願いして彼を置いてきた。

日本人は誰一人いない孤児院での4泊5日のボランティア生活。


最初からかかってきても対応しないと決めた電話は、2日目からはもう鳴らなくなった。

彼の孤児院生活は明日でいよいよ最終日を迎える。

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